熊本県と宮崎県の県境に位置し、かつての小さな宿場町である馬見原からの新茶。
種類が多いため、ファーストフラッシュ(春摘み)とセカンドフラッシュ(夏摘み)を2回に分けて紹介しているが、前回に続き今回はセカンドフラッシュをご紹介。
今年の作り手のセカンドフラッシュの紅茶は、作り手ならではの心地よい大地を想起させる香りに、ウンカ芽のものも含めて華やかさが溶け込むような紅茶をセレクト。
今年はつゆひかり、岩永一号、みなみさやかのセカンドフラッシュを仕入れた。
つゆひかりのセカンドフラッシュは、当店でも定番になっているが、今年は摘採した時期の微妙な違いで面白く悩ましく、どちらもひとつの紅茶の風味として成立している出来栄えだったのでロット違いで2種類を選んだ。
ひとつはウンカ芽が僅かに入ったロットで、つゆひかりという品種の丸みのある甘い香りと旨味にコクが活きた風味のもの。
柑橘に爽やかな花が散りばめられたクリーミーな甘い香りに、コクと程よい渋味がある温和な味わいで水色とともに濃厚な紅茶らしさがある。
飲みごたえがあるが重たい印象はなく、バニラを帯びた爽やかな花香が鼻腔に心地よい味わい深い紅茶。
もう一つは、ウンカ芽で作られた蜜香といわれる甘い華やかな香りがしっかりと感じられるロット。
完熟フルーツと蘭にも似た花の香りが入り混じる甘い香りに、コクと前者よりも少しキレがある味わい。
甘い風味に程よいコクとキレのバランスが好ましい。
後者のタイプは2年前にも仕入れたのだが、もう少し寝かせたほうがその香りの魅力を堪能できるため、これから香りが伸びるのをもう少し待ってから時間差でご提供する予定だ。
どちらのロットも甲乙つけ難い出来で、是非両方をお試しいただきたい。
岩永一号のセカンドフラッシュも、今年はロット違いを2種類セレクト。
理由は上記のつゆひかりとほぼ同様だ。
ひとつは岩永一号の蜂蜜のような香りにミルクに似たクリーミーな甘い香りが加わり、スミレの花のような清々しい香りがすんと鼻を抜けるもの。
程よいコクがありつつ、丸みがある柔らかな香りとすっきりとした味わいが上品にまとまった風味で、透明感があり香味のバランスがよい紅茶。
もうひとつは蜜香と言われるウンカ芽特有の甘い香りを纏ったロット。
さらりとした口当たりに、桃の甘い香りや柘榴の土っぽい香り、そして優しい野花のような上品だがしっかりとした花蜜の香りが漂っている。
前者のロットよりすっきりとした軽い味わいとのど越し。
どちらのロットも品種の持つ穏やかな甘い香りに作り手特有の温かな土の香りが混じり合い、複雑で心地よい香りのハーモニーを楽しむことができる。
岩永一号という先代が抜擢した茶樹の、摘採時期による香りの変化は誠に興味深い。
こちらの紅茶も是非とも2種類の飲み比べを楽しんでいただきたい。
今年はみなみさやかのセカンドフラッシュも新たに入荷。
みなみさやかは例えが難しい独特の華やかな花香が特徴的な品種だが、作り手のみなみさやかはその花香に桃や葡萄や無花果や栗に柘榴といった、秋の果実に種実を連想させるような甘い華やかさと木質の香りが調和している。
味わいは甘いコクと品種らしい適度な苦渋味があり、さっぱりとした後味で個性的な華やかさもある香りだが、風味が重くなく香味のバランスがよい。
わかりやすい個性的な華やかさとともに、複雑なそれでいてしっとりと落ち着きのある風味もある紅茶で、フレーバーティーがお好みの方も含めて万人に受け入れられやすい紅茶に仕上がっている。
この作り手の紅茶を毎年口にしながら、風土が作り出す滋味と作り手が醸す香りについて考える。
我々は分かりやすく華やかなものに惹かれがちで、それはものを楽しむ上での大切な要素だ。
一方で、一見穏やかにみえるものの奥深さやユニークな個性に触れることの喜びもまた格別だろう。
華やかさと優しい滋味の交差する紅茶を、当店でじっくりとご堪能ください。
当店の通販サイト(https://shop.sarutoriibara-kocha.net/)でも当店の茶葉をご購入いただけます。
※当店をご利用の際は、当店の階段登り口あるいは扉に貼っている、注意書きをご一読いただき、ご納得された上でご入店ください。
当店はマスク着用入店、一組2名様まで、おしゃべりはご遠慮いただいております。
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