あぁこの甘い香り、これこれ！
思わず無意味に拳を天に衝く。
心踊る今年の春のお茶第一号が、日本の一番南の地である沖縄県の名護から届いた。
かつては羽地と呼ばれていた土地であり、その名を残したくて当店ではこちらの作り手の茶を、羽地紅茶という名で取り扱っている。
この紅茶はいつもとは少し様子が違う。
テストロット、として作り手から譲っていただいたものだ。
なかなか出会うことができないレアな状態のお茶でもある。
ゆたかみどりという品種を紅茶にしたものだが、発酵は浅く通常よりやや水分率が高く、青いレモン様の柑橘香がすんと漂いかなりグリニッシュ。
何より、ゆたかみどりの品種特性がしっかりと感じられ、正に茶飴を想起させる甘い甘い風味に、飲み終わりはじわじわきゅっと渋味が現れる。
勿論製茶の仕方によると前置きして、青さが強過ぎると渋味や時にえぐみを感じやすくなってしまう場合もあるのだが、この紅茶は作り手の確かな腕により、香味は既にとてもバランスよくまとまっている。
確かな腕がなければ、この段階でお披露目することはむしろできないだろう。
品種特性はしっかりと感じつつも品良く程よく甘い香味が引き立ち、ダージリンの春摘み紅茶(1stフラッシュ)さえ想起させるクオリティである。
この紅茶は、作り手が今後どのように手を加えるか思案していたものとのこと。
手を加える前、風味にさらに変化が加わる前段階の状態だが、品種の好ましい特性と作り手らしい甘い香りをとても感じやすい。
温暖化の影響は茶の摘採に影響を与えているが、小さく営む当店に希少なお茶を快く譲ってくれた作り手に感謝しきりである。
今後の経年、乾燥・火入れの加減により茶の風味は一段と変化するであろうが、作り手が引き出したゆたかみどりの甘くすっきりとした香味、なかなか出会うことができないフレッシュな状態を当店で是非みなさまに味わっていただきたいと思っている。
また、今回は量も限られており迷ったのだが、当店を日頃よりご利用いただき今は当店へ足をお運びいただけない方に、少しでもこの紅茶が届いてくれればとの思いから、ほんの少しではあるが通販サイト(https://shop.sarutoriibara-kocha.net/)で販売することにした。
※通販サイトのみでの販売。
※お一人様2個限り、ご注文は一回のみ。
※水分率が高いため、賞味期限は短め。
この紅茶はテストロットとのことだが、テストでもあろうし当然今後の紅茶作りの土台となるものでもあろう。
完成と言い切ることはできなくとも、未完成とも断言できない。
そのようなものの販売に難色を示す方もいらっしゃるだろう。
しかし、作り手のお茶あるいは製茶工程のひとつとして、普段口にできないこのような紅茶を味わっていただけることは、当店主としてはとても意義のあることだと思っている。
小さく営む当店の今年初の紅茶がこのようにはじまり、店主は早くも(いつも)作り手から差し出されたお茶に興奮し、お伝えしたいことがあり過ぎて誠に悩ましいが、当店をご利用くださるみなさまにも新たな発見のきっかけをお渡しできれば、しばし茶の風味をお楽しみいただけたらこの上ない喜びである。
作り手とお客様の善意に支えていただきながら、ありがとうの気持ちと共に今年のお茶を少しずつ少しずつご紹介してまいります。
のんびりとお待ちいただけますと幸いです。
通販サイト
https://shop.sarutoriibara-kocha.net/
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